崇神天皇の命を受けて西道(西国)を平定する為に遣わされた将軍「吉備津彦命」が、備中国の主宰「岩山明神」に「温羅(うら)(吉備冠者)」を退治する依頼を受ける。 |
第一幕 | |
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岩山明神が登場 国を守護する神なればわが拝領を鎮めん 新山というところにたてこもって邪道をはたらく「温羅」の暴状に耐えかねていた。 「それがしの自力で防ぐには叶わまじきにより、吉備津彦命の神力により、温羅やすやすと退治なさばやと存じ候」 |
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第二幕 | |
吉備津彦命の登場 吉備の中山おしなえて ひとしお待つぞ神のいさおし 岩山明神の息女内宮姫が登場 吉備津彦命に軍略を謀る。 赤金の御弓、真金の御矢を捧げ奉らん しかれども、ただ一筋にては相叶うまじ。二筋もって射たもうときは、一筋の矢は温羅の矢と食い合いて落ち申さん。(矢喰の宮) また一筋の矢は温羅にまさしく的中せば、 温羅変化て鯉(こい)となれば、御命は鵜(う)となり、鷹(たか)となれば鵬(おおとり)となりたもうて、この神秘なる神通力をもってかの温羅やすやすと退治給えや |
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第三幕 | |
温羅が登場 風嵐音は激しく聞こゆらん いまこそ温羅が来たるらんかや 吉備津彦命は、戦いにそなえて力のこもった荒舞を舞う。 やがて「おーのーれ」と叫ぶ温羅が舞い出る。 激しい大立廻りの合戦となる。 白木綿一反を神殿へ斜めに張り渡して、血吸川に見立てる。 命と温羅双方が弓矢をたがえての「さぐり」がはじまる。 命の二の矢で血吸川に隠れていた温羅が姿を現し、血吸川に見立てた布が除かれた神殿での組み合いがはじまる。 ついに温羅は降参して一言申す。 我を一人助け給うものなれば、吉備三ヶ国の系図を捧げ奉らん 吉備津彦命が申す。 いよいよ我に降伏なし給うものなれば、宮の境内より一段下がり、お釜の段にて祝い申す 温羅が申す。 しからばお釜の段において、御動詞を捧げるほどに、 幾世久しくあがめ給え 嬉しき舞で幕となる。 |
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桃太郎の説話「吉備津彦命の鬼退治」 | |
桃太郎の説話「吉備津彦命の鬼退治」 第11代垂仁(すいにん)天皇のころ。異国から一人の鬼神が吉備国に飛来して住みついた。名を「温羅(うら)」または、「吉備冠者(きびのかじゃ)」といわれ、もとは百済(くだら)の王子だった。 両眼はらんらんと輝き、ボウボウとした真っ赤な髪、長いひげ、身の丈は、1丈4尺に及んだ。その性格は、凶暴凶悪。居城を備中の新山に構え、さらに岩屋山に盾(城)を築いた。 都に送る貢物をかすめとり、婦女子をさらい、暴虐のかぎりをつくしたので、人々は、恐れおののき朝廷に訴えた。朝廷は、武将を派遣するが、敗戦を重ねた。 朝廷の切り札として「吉備津彦命」を派遣された。大軍をひきつれた命は、吉備の中山に本陣を置き、片岡山に石盾(石城)を築いた。 激しい戦いが始まった。命の射かけた矢は、不思議なことにいつも温羅が放った矢と空中でかみ合っていずれも海に落ちた。命は、神力を現し、弓に2本の矢をつがえて同時には射た。温羅は、不意をつかれ、1本の矢はかみ合って海に落ちたが、残る1本の矢が温羅の左眼をつらぬいた。血がとめどなく流れ、たちまち川となった。(総社市の血吸(ちすい)川) 温羅は、たまらず雉(キジ)となって山中に逃げさると、命は、鷹(タカ)となってこれを追い、追い詰められた温羅は、今度は鯉(コイ)になって血吸川に姿をくらます。すると命は、鵜(ウ)となって鯉をかみあげた。 ついに、温羅は命に降伏し、命は温羅の首をはねて、串にさしてさらした。 ところが、不思議なことに、この鬼の首は何年たっても大声を出してほえつづけた。命は、家来の犬飼氏に命じて犬に食わせたが、ドクロとなっっても温羅の首はほえつづけた。 ほえつづけるドクロを命は、吉備津宮の釜殿のカマドの地下8尺ばかりのところに埋めたが、13年間うねりはやまない。ある夜の命の夢に温羅が現れて言った。 『吾が妻、阿曽郷の祝の娘阿曽媛をして命の釜殿の御饌を炊がめよ。もし世の中に事あれば竃の前に参り給はば 幸有れば裕に鳴り 禍有れば荒らかに鳴ろう。命は世を捨てて後は霊神と現れ給え。われは一の使者となって四民に賞罰を加えん』 この神事は、「鳴釜神事」として吉備津神社にて現在も受け継がれております。 桃太郎伝説と鬼を退治した吉備津彦命の関係もおもしろい。吉備国の由来は、五穀の「黍(キビ)」がこの国でよくとれたからと言われる。キビ団子は、桃太郎ですね。また、吉備津彦命には軍用犬の部隊があり、それを率いた犬養部の子孫が犬養氏を称した。桃太郎の家来にも犬がいますね。 |
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吉備津彦命 (きびつひこのみこと) 「日本書記」では、五十狭芹彦命(いそさせりひこのみこと)。 「古事記」では、吉備津彦みこと(きびつひこのみこと)。 人皇第七代、考霊天皇の第二の皇子。 大産命が西海道に派遣した征夷大将軍。 |
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岩山明神 (いわやまみょうじん) 備中国の主宰。いわやま明神という。 |
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内宮姫 (ないぐうひめ) 岩山明神の息女。 吉備津彦命に温羅退治の策を授ける。 |
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温羅 (うら) 異国から一人の鬼神が吉備国に飛来して住みついた。 「温羅(うら)」または、「吉備冠者(きびのかじゃ)」といわれる。 もとは百済(くだら)の王子だった。 |
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