天穂日の命(あめのほひのみこと)の段 | |
天穂日の命は、天照大神の指示により「神二代の天押穂耳命に葦原中津国を治めさせる為、大国主に国を譲るように」と勅使として天下った。 神の座す高天原を立ち出て水穂国へさこうらん 舞い出すそれがしは天照大神の神勅を受け天下る天穂日命にてあり、 漸く葦原中津国へ着いたと覚えてあり。 このところにて大国主命へ神勅相伝えばやと存じ候。 大国主の命が壇上に座し、天穂日の命と協議する。 大国主の命が申す 天津神へ国は譲り奉る 天穂日の命が申す 天照大神に奏上奉り二代の君降臨を仰ぎ奉る |
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天熊人武夷鳥の命(あめのくまひとたけひなどりのみこと)の段 | |
天熊人武夷鳥の命は、天穂日命を聞かれた神二代の天押穂耳命は「葦原中津国は、不安定である」として二代の神は降臨せず、その後、葦原中津国が繁栄していると聞き、地神三代 瓊瓊杵命(ににぎのみこと)をこの地の君になさんとして国譲りを再度申し立てる勅使とした天下った。 天の八重雲ふみわけて瑞穂の国へさこうらん そも舞い出すそれがしは天津神の勅命を受け天下る天熊人武夷鳥の命にてあり。 天津神天の叢雲(むらくも)袖下りて現世の御稜威高千穂の峯、さて此処こそ葦原中津国へ着いたと覚えてあり此の所にて大国主命へ勅命相述べばやと存じ候。 大国主の命が壇上に座し、武夷鳥の命と協議する。 大国主の命が申す 地神二代の神、降臨しなかった為、国中を駆け巡って、貧しきものには福を授け、愚かなるものには訓戒をなし、弱きモノを助け強きモノを制道し、病あるものには薬の道を教えて、国の民と親密な関係を持ち、八十一柱の福の神もいるので相談協議して後、 ゆるゆる国は譲り奉らんぞな。 基より神勅に違背は仕らん、故に葦原の国政は天津神に返上奉るべきものとは、とくと承知は致し居るかなれど、左様一朝一夕のことには相成り難き事情のある事に候えば、御命も君命を辱め給うこと相成りまじく、然らば寸時葦原中津国へ御滞在に相成ればその間において、下臣にもとくと神勅奉戴の旨を持って諭し奉公の意を戴し奉らん程に、何卒斬時の間御滞在の程を懇情なし奉らんぞや。 武夷鳥の命が申す 勅使を御遣いしに相成る様な事ありては、それがしの面目、その責務も如何かと存ずるが此の儀如何に御召思し下さるか。 大国主の命が申す 御命はそれがしと主従の間柄となり大国主命の下臣の稲背脛命(いなせはぎのみこと)と命名致しそれがしが主宰する政事の内助を一任申し上げおきしなければ高天原より勅使天下りに相成る共よもや、武夷鳥命とも見現すべきこともあるまじき。 |
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天若彦の命(あめのわかひこのみこと)の段 | |
天若彦の命が申す 四方の山景色は四季に変われども浪風静か天が下かな。 舞い出すそれがしは天若彦命にてあり急ぎ漸く葦原中津国へ着いたと覚えてあり大国主命に面会致し神勅相述べ申すにてあり、さてこの所におわします神は如何なる神にましますかな。 稲背脛の命が大国主の命と偽って申す 我は葦原中津国の主宰大国主命にて候 天若彦の命が申す 先に天熊人武夷鳥命を以って神勅を相伝へおきたるに未だ高天原に輻輳も之なく、皇大神は如何にもこの儀不快と思し召され以ってそれがしに命令なし給う。汝は勇壮潔気の神なれば特に天の迦古弓矢の副矢を仕す程に若し神勅を違背するものなればこの迦古弓副矢を以って安々退治なし地神三代の君の降臨を事速かならしめよと神言によりこの度勅使として天下りし者なれば直に神言のままに御従いあって国は早速三代の君に捧げ奉り給えやな。 稲背脛の命が武夷鳥命と名乗り出て申す 大国主の命は神徳広大無遍なる神なればその神徳には何者も敬服せざるはなし御命とても覚え奉らん依って御命はそれがしと心を一知にして今暫くこの国へ御止まりに相成れば又来るべきときを計らい国土分解の実を揚げんと存ずる そのお気持ちであるなら、大国主の命の18歳の姫君との仲を取り持ちましょう。 次女の佐具女に申し付けて、ここへおさそいいたします。 何卒心置きなく寛ぎ御滞在なし給えやの。 |
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下照姫(したてるひめ)と佐具女(さぐめ)の段 | |
下照姫が申す 月に雲花に嵐の誘うらん神代ながらののりのまにまに舞い出だす自らは大国主命の娘下照姫とは自らが事にて候、又自らは姫宮に遣え奉る侍女佐具女にてあり |
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天若彦の命が申す 天熊人武夷鳥の命又の名は稲背脛の命の取り計らい持ちにより姫宮をして我が向姫と定め共に葦原中津国を守護致させよとの事なれば何卒我に従いこの方へ来たり給えやの。 下照姫が申す あら嬉しき御事なり、されば妹背の契り奉らん。 天若彦の命が申す 瓢方の高天原も国土も下照姫変わらぬ髪のほうのしるべに |
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七瀬の雉(キジ)が鳴く 「イチョク イチョク 異勅 異勅」 庭先の伊豆桂の木に異な鳥が参りて何事か語る様に鳴く姿を見て、高天原より天若彦命の様子を伺うため、中津国へ飛来した七瀬の雉であると確信した。天に帰せば一大事として、天の迦古弓矢(あめのかごゆみ)・羽々矢(はばや)で射止めた。その矢は、キジを貫通して血のついた矢が高天原に届いた。 高天原からの声 ややあやしな朱塗りにそめし天羽々矢これこそいん先天若彦にもたらして下せし矢なり。 大国主命と戦い撃ちし矢なるか又高天原に逆心あってうちしなるか、この矢に当たって証を現せ。 天若彦の命の胸に当たり倒れる。下照姫と佐具女に抱えられて幕入りとなる。 |
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大国主の命 (おおくにぬしのみこと) 悪を避け善を施す文武両面をもつ神。寿福増長、福徳円満の神。 島根県大社町の出雲大社の祭神。 |
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天穂日の命 (あめのほひのみこと) 天照大神の指示により「神二代の天押穂耳命に葦原中津国を治めさせる為、大国主に国を譲るように」と勅使として天下った。 |
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天熊人武夷鳥の命 (あめのくまひとたけひなどりのみこと) 稲背脛の命(いなせはぎのみこと) 天照大神の指示により「神三代の天押穂耳命に葦原中津国を治めさせる為、大国主に国を譲るように」と勅使として天下った。後に大国主命の家臣となる。 |
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天若彦の命 (あめのわかひこのみこと) 先の勅使である天熊人武夷鳥命からの返答も無く、天をないがしろにしているなら大国主を弓で射る勢いで、地上に降り立った。しかし、稲背脛命の説得によりこの地にとどまる。が、高天原の怒りに触れる。 |
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下照姫 (したてるひめ) 大国主の姫君。天若彦命と契りを交わす。 |
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佐具女 (さぐめ) 下照姫の侍女。 |
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YouTube動画 矢掛社「地神二代」by KonixFire